零階(0F)の必要性について
地面の直上の階は一階(1F)である。
というのは必ずしも正しくない。 欧州ではその階を ground floor と言い、その上の階を 1F (first floor)と呼ぶのが一般的だそうだ。 どちらの数え方を取るかは数え方の問題で特に問題ないように思える。 プログラマはものを0から数えたがり、普通の人は1から数えたがる程度の差のように。
一方で、地階に関しては基本的に世界共通のようであり、地上のすぐ下の階は地下一階(B1)と呼ぶ。 これによって、北米や日本で主流の数え方にちょっと問題が起こる。 地下□階を意味する接頭辞である"B"は、地下方向に向かうという意味で負の符号として感覚的に理解される。 そうなると B1→1F の間にゼロが存在しないことが不自然を感じるようになるのだ。
つまり、地下階の数え方と地上階の統一性がない。 -1F→0F→1F と表記したほうがすっきりする。 しかし、地面の直上の階を一階とする文化がすでに深く根付いてしまったので、今更変えられない。
非常に些細なことだが、このような非統一性によって柔軟性が欠けてしまう。 その影響で残念なことになってしまった(と私は昔から思っている)ビルがラフォーレ原宿である。
ラフォーレ原宿は原宿の表参道と明治通りの交差点付近にあるファッションビルである。
「La Foret」のForetは森(英語だとforest)の意味であることからわかるように、運営者は森ビルである。
森ビルは近年変な特徴的な商業ビルを作るが、1978年竣工のこのビルも建築的な特徴がある。
ラフォーレ原宿のフロアガイドなどを見ればすぐにわかるが、階が小数点刻みなのである。 1Fと2Fの間(中二階)は1.5Fといったように表記する。 さらに驚きなのは地下もB1.5F(地下1.5階)といったように小数点刻みになっている。 ラフォーレミュージアム(6F)の下の階の5FからB1.5Fまで、すべて0.5F刻みになっている。 調べていないので確証は持てないが、0.5F刻みを徹底的にやっているビルは世界中でココだけなのでは、と思う。
問題は小数点を入れてしまった結果、地下と地上の階の数字の連続性がないことが明快に見えてしまうことになっている。 すなわち、 B1F → B0.5F → 1F → 1.5F となっている箇所だ。 もし入り口の階が 0F という文化が根付いていれば、 B1F → B0.5F → 0F → 0.5F → 1F となっていたはずだ。 この事実に気づいてしまうと、日本における階の数え方が欧州方式ではなく北米方式になってしまったのは非常に残念で仕方ない。
References
- Storey Wikipedia
- ラフォーレ原宿
- 森ビルのプロジェクト > ラフォーレ原宿 森ビル株式会社